今回の追加曲は過去のデータ変換で導入した曲とは違い、耳コピでの打ち込み
によるデータです。今回はその過程で気づいたことなどをお伝えします。
過去にアップした音楽関連データでも述べましたように、筆者は楽譜はおろか、
音符すら読めないレベルで、音楽理論のイロハすら全く理解できていません。
義務教育で習った記憶はわずかにあるのですが、授業中に全く理解できなくて、
やる気もありませんでした。FF5改造が音楽に再び触れるきっかけになりました。
とはいえ、データ変換後の調整で必要にかられて覚えたわずかな用語を知って
いるのみでほとんどの用語は知りません。偶然にも奇跡の音楽エディタと出会う
ことができたお陰で、音楽知識ほぼゼロでも、どうにかシーケンスデータを作成
できました。では、その奇跡の音楽エディタとは・・・?
クジラ飛行机さんのフリーソフト、テキスト音楽「サクラ」です。
このソフトでは、ドレミファをカタカナで書き込んだデータを演奏できます。ですが、
筆者には絶対音感も音楽の修練による音感もありません。つまり、音とドレミを
頭の中で一致させることができません。本当にありがたいことに、このソフトには
鍵盤入力モードがあり、クリックした位置の音が鳴るとともにエディタに自動的に
ドレミファが記入されます。要は鍵盤入力の総当りをすることで、今探している音
を見つけることができます。押した位置の音はソフトが自動で書いてくれるので、
楽譜も音符も知らなくてもデータが作れてしまいます。カタカナのドレミでの表記を
ストトン表記と呼ぶことすら知らなくて、このソフトの付属ドキュメントで初めて知る
という体たらく・・・。前置きが長くなりましたのでポイントをまとめます。
鍵盤入力モードで音を探せることと、見つけた音がストトン表記になること。この
2点が音楽知識ゼロの状態でデータを打ち込むための橋渡しとなります。ソフト
が記入してくれたドレミファ表記をTeraPadか秀丸などに貼り付けて置換機能で
FF5の音符データの数値に1対1で変換していけば、冗談抜きで音楽の知識が
なくてもデータが出来てしまいます。これはもう、特異点かコペルニクス的転回と
でも言って良いほどの衝撃でした。
少々大げさかもしれませんが、耳コピでの打ち込みは絶対無理だと思い込んで
いたので、知識の欠如を奇跡的にソフトでカバーできたことが幸いでした。
初めの項目では、知識ゼロでOK!といういかにも出来すぎた話ばかりでしたが、
現実にはマイナスポイントも多々あります。まず、頭の中で音とドレミファが一致
しないので、当たりをつけて鍵盤を押してみながら音を探します。これにはかなり
時間がかかります。反復箇所以外の音は全て鍵盤で探さなければならないので、
非常に根気のいる工程だといえます。主旋律ならまだ比較的探し易いのですが、
ベースラインは重低音なので音を探すのに非常に難儀しました。とにかく尋常じゃ
ないほど時間がかかります。今回作成したFFLの「空駆ける船に乗り」は、短くて
シンプルな構成なのですが、トラック1〜6を一通り作るのに、30時間ほど費やして
います。この時点で耳コピ曲の量産は、筆者には現実的に厳しいと確信しました。
逆に言えば絶対音感がある人や、過去に音楽を習ったことがあって、頭の中で
ある程度、音と音符を一致させられる人なら、少なくとも筆者の10分の1程度には
所要時間を抑えられると思います。上記の曲なら最長でも3時間ほどで作成可能
と見積もれます。それどころか1〜2時間で済むかもしれません。
知識がゼロでも不撓不屈の根気さえあれば可能にする手段はあるよ、という身も
フタもないオチでした。とにかく効率悪いゴリゴリの力業です。
なんせ、プログラムによる既存曲のデータ変換なら0.1秒未満の刹那ですからね。
トホホ・・・。そのうち人工知能に丸投げで変換できる時代が来るかもしれません。
今回追加した「空駆ける船に乗り」は携帯アプリ配信のFF Legendsの曲です。この
ゲームは、グラフィックやジョブなどがSFC版のFF5に極限まで寄せられています。
FFLでは無の力を求める大皇帝がラスボスで、FF5のエクスデスと重なります。実質、
システムとガワを若干変えたFF5といっても良いような内容です。とはいえ、携帯用
のアプリはSFCよりも遥かに容量が多く、画像パレットは24色あり、BGMの音源も
SFCよりは少し増えているような印象です。また、データファイルにはガラケー用の
コピー防止のための暗号がかかっており、需要の無さゆえに誰も暗号を解読しては
おらず、データの抽出ができません。そのため、使用されている波形データは移植
不可能です。そもそも携帯アプリの音楽はSPCではないでしょうし・・・。そんな事情
があり、今回の移植曲では携帯版とは異なる波形を使っています。
出だしの波形がよくわからずStringsで代用しています。色々と波形を入れ替えては
みたものの携帯版と同じ音は見つかりませんでした。全体を通して同じ波形が調達
できていないため、かなり異質な感じになってしまって、残念ながら聴き苦しいものと
なっています。また、エコーバッファと波形データのメモリ領域の都合で、Shaker≒
カバサ的な音源のシャッシャカシャッシャカと鳴り続けるパートをカットしております。
更に、Fluteの音源の音がSFCのものとは明らかに違うため、無理やりFluteを使う
のは控え、Stringsでごまかしています。他にもここの22秒からのミ*8 ファ#*8 ソ*8…
の部分のよくわからない音源をPizzicato Stringsで代用していますが、やはり違和感
があります。波形を変えまくって試行錯誤したものの、結局わからずじまいでした。
波形は形式上は1曲につき16種類指定できるのですが、エコー用のバッファと波形
のバッファが隣接していて、波形を使いすぎるとオーバーフローして音が乱れたり、
ノイズが入ったりと、要はBGMがバグります。そのため実質的に指定できる波形は
FF5の場合は10種類前後が限界っぽい感じです。そんな訳で、携帯版の曲の完全
再現には程遠く、部分的にOST版の表現に差し替えたりして取り繕ってみました。
せめて同じ波形が入手できれば幾分かマシになりますが、良い曲なだけに幾つも
妥協することになったのが心残りです。拾い切れていない音も結構あります。
テキスト音楽「サクラ」のお陰で、拙劣ながらも耳コピによる曲の追加ができたことに
大変感謝しております。
シーケンスデータ: $28A800-28ABFF
波形指定: $29FD00-29FD1F
今後、テキスト音楽「サクラ」で耳コピに挑まれる方への参考として上記の曲のmmlを
同梱しておきます。通常のmmlとは異なり、中身はテキスト音楽「サクラ」専用です。
主旋律を打ち込んだだけで、他のトラックは直接SPCに打ち込んだため未収録です。
今回はこれにて終わります。